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二国間クレジット制度(JCM)とは

 二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)とは、世界の温室効果ガス(GHG)削減に貢献するため、日本政府が構築・実施している制度で、優れた低炭素技術、製品、システム、サービス、インフラ等の途上国への普及や対策実施を促進し、これらの活動により実現したGHG排出削減・吸収に対する日本の貢献を定量的に評価し、我が国の削減目標の達成に活用する制度です。
2015年12月にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)においても、安倍総理が「日本は、二国間クレジット制度などを駆使することで、途上国の負担を下げながら、画期的な低炭素技術を普及させていきます。」とスピーチされ、日本政府全体で進めている温暖化対策の一つです。

本項の解説は、「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism (JCM))の最新動向」(平成29年1月版)を参照しています。

JCMの基本概念

  • ・優れた低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラの普及や緩和活動の実 施を加速し、途上国の持続可能な開発に貢献。
  • ・GHG排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、 我が国の削減目標の達成に活用。
  • ・地球規模でのGHG排出削減・吸収行動を促進することにより、国連気 候変動枠組条約の究極的な目的の達成に貢献。

JCMの基本概念

JCMが必要とされた背景

地球温暖化は既に世界的に重要な環境課題として認識されており、2016年11月4日に発効された「パリ協定」でも、世界共通の長期目標として、平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に抑える2℃目標を設定し、更に1.5℃に抑える努力を追求することに言及しています。世界規模でGHGを削減し、気温上昇による気候変動を抑えるためには、先進国だけではなく経済発展が顕著でエネルギー消費量が増大している発展途上国においても早期の低炭素化が必要なってきます。

しかしながら、先進的な低炭素技術の多くは、イニシャルコストやランニングコストが高く、途上国にとっては投資回収が見込みにくいのが現状です。また、CDM及びJIが2012年までの国際的なクレジット制度の代表格でありましたが、京都議定書の第二約束期間の設定と第二約束期間における日本の削減目標が設定されなかったことから、CDM及びJIの利用が大幅に制約されることとなり、あるいは利用できなくなりました。特にCDMでは、プロジェクトの開発から実施までの間に、プロジェクト設計書(Project Design Document;PDD)の作成とその第三者機関による有効化審査(validation)、validation後のCDM理事会による登録前レビューなど、多大な時間を要するなど、民間部門によるプロジェクト実施の障害となることが以前から問題視されていました。

そこでCDMを補完する市場メカニズムの仕組みとして、日本政府はJCMを提唱し、優れた低炭素技術・システム・インフラ等を途上国に提供してGHGを削減するとともに、その排出削減・吸収量の一部を日本の削減量として適切にカウントすることとしています。日本政府によると、「JCMの構築・実施により、民間ベースの事業による貢献分とは別に、毎年度の予算の範囲内で行う日本 政府の事業により、2030年度までの累積で5,000万から1億t-CO2の国際的な排出削減・吸収量が見込まれる」としています。

JCMが必要とされた背景

JCMとCDMの違い

CDMが全てのプロセスをUNFCCC CDM理事会の下で実施する“中央集権型”の構造になっているのに対し、JCMは日本とパートナー国の二カ国で実施される分権的な制度といえます。

JCMでは、その方法論は、パートナー国でのプロジェクトに適用されるものであり、その方法論が妥当かどうかは日本とパートナー国の間で構成される合同委員会(Joint Committee;JC)にて承認されます。それ以外にも、ルールやガイドラインの策定からプロジェクトの登録に至るまで、多くのプロセスを二国間の合意(JCの承認)に基づき実施します。プロジェクトの開発から実施に至るプロセスは、CDMに類似していますが、パートナー国に限定して進められるため、スピーディーかつ、個々の途上国の実情に応じて、より実用的で簡潔に進められるという利点があります。また、CDMではプロジェクトの妥当性の確認と検証する機関が別々である必要がありましたが、JCMでは同じ機関が同じ機関で同時に実施可能であるため、よりプロセスにかかる時間が短縮できる仕組みとなっています。

ただし、JCMは取引を行わないクレジット制度として開始されており、すなわちJCMクレジットの国際的な取引・移転は現時点ではできないこととなっています。日本とパートナー国は、JCMの実施状況を踏まえ、取引可能なクレジットを発行する制度へ移行するために二国間協議を継続的に行い、できるだけ早期に結論を得るとされています。

JCMとCDMの比較

CDM JCM
制度の位置づけ 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の京都議定書にて規定されている。京都議定書批准国が対象となる*1 日本政府とJCM実施について合意し、覚書に署名したパートナー国が対象となる。
なお、UNFCCCの締約国会議においては、締約国による個別又は共同の取り組みの一つとして認められている。
炭素クレジットの効果 京都議定書批准国の登録簿上で有効であり、取引も可能である。
UNFCCC附属書I締約国(先進締約国)のUNFCCCへの報告においては、削減目標の達成に活用(削減として算入)することができる。
JCM登録簿上で有効であるが、国際的な取引は現状はできない*2
日本及びパートナー国のUNFCCCへの報告においては、削減目標の達成に活用(削減として算入)することができる。
制度管理体制 京都議定書の締約国会合(CMP)の下に設置される、「CDM理事会(CDM EB)」*3が制度管理を行う。CMPの決定により、制度の方針等が決められる場合があるが、CMP決定を受けてCDM理事会が制度運用に反映して進めることとなる。 日本とパートナー国の間に設置される「合同委員会(JC)」*4が制度の管理(ルール等の策定、方法論の承認・策定、プロジェクト登録、JCMクレジットの発行通知、第三者機関(TPE)の指定)を行う。
プロジェクトの要件 ホスト国(UNFCCC非附属書I締約国(開発途上締約国))の持続可能な開発に貢献し、、追加的なGHG削減を達成するプロジェクト。
また、CDM理事会で承認された方法論に定められた個別の適用条件を満たす必要がある。
GHG削減を達成するプロジェクト。追加的なGHG削減を達成するために、優れた低炭素技術等を用いること、純削減(net reduction)が確保されることが求められる。
また、JCで承認された方法論に定められた個別の適格性要件を満たす必要がある。
追加的なGHG削減 追加的なGHG削減の達成のために、「追加性」*5をプロジェクト実施者が証明する必要がある。CDM理事会では「追加性証明ツール」を準備しているが、プロジェクト実施者にとっては相当の負担となり、CDMの取引費用(transaction cost)を引き上げているとされている。 追加的なGHG削減を達成することを証明する「追加性」の概念を、優れた低炭素技術の適用により、従来技術との差別化から追加性があるとしている。よって、CDMでの煩雑な「追加性」の証明のプロセスを回避できるようになり、プロジェクト実施者にとっての負担を軽減している。
方法論の開発 プロジェクト実施者が新規方法論案を開発し、CDM理事会に承認申請を提出した上で、CDM理事会の承認を得る必要がある。
また、CDM理事会による統合方法論・小規模方法論の策定も行われる。
プロジェクト実施者が新規方法論を開発し、JCに承認申請を提出した上で、JCの承認を得る必要がある。なお、JCM方法論の新規開発に当たっては、日本政府の支援を受けられる場合がある。
また、JCによる方法論の策定も認められている。
クレジットの創出 ベースライン排出量からプロジェクト排出量とリーケージ排出量*6を差し引いた分が、排出削減量となり、その排出削減量に基づいて、CDM理事会によりCERが発行される。
方法論に基づいて、算定・モニタリングすることが必須となる。
リファレンス排出量からプロジェクト排出量を差し引いた分が、保守的な排出削減量となり、その保守的な排出削減量に基づいて、JCMクレジットが各国政府によって発行される。
方法論に基づいて、算定・モニタリングする必要があるが、方法論に含まれるモニタリング用スプレッドシートにモニタリング結果を入力すればよい。
排出削減量の算定方法 ベースライン方法論に基づいたベースライン排出量を、プロジェクト実施段階でのモニタリング等により算定する。ベースライン排出量の定量化のためには、モニタリング結果に基づいた測定値が必要となることが多い。
また、プロジェクト排出量(及びリーケージ排出量)についてもモニタリング結果に基づいて、算定する必要がある。
JCM方法論に基づいて、リファレンス排出量とプロジェクト排出量を算定する。JCM方法論にはモニタリング結果を記入すればリファレンス排出量・プロジェクト排出量が自動算定されるスプレッドシートが添付されているため、原則として必要なモニタリング結果を入力すればよい。
モニタリング モニタリング方法論で定められたモニタリング項目を、承認方法論で定められている頻度・方法によりモニタリングする必要がある。
モニタリング結果により排出削減量を算定するためには、スプレッドシートによる計算表を用いられることが多いが、その計算表はプロジェクト実施者側で、方法論で求められる条件に沿って、作成する必要がある。
なお、モニタリングの頻度や方法が方法論の規定に沿っていない場合、当該モニタリング期間の排出削減量について、クレジット発行が認められない場合がある。
JCM方法論で定められたモニタリング項目について、モニタリングし、モニタリング結果をJCM方法論添付の承認済みスプレッドシート(算定用)に入力する。
CDMと違い、算定用スプレッドシートがJC承認対象となっているため、それをそのまま用いればよく、プロジェクト実施者が作成する必要がない。
第三者による審査・検証 CDM理事会が指定する「指定運営機関(DOE)」により、プロジェクトの有効化審査(validation)とモニタリングレポートに対する検証(verification)(モニタリングレポート毎に)が必要。
小規模プロジェクトを除き、validationとverificationは同一のDOEが行うことは認められていない。
JCが指定する「第三者機関(TPE)」により、プロジェクトの妥当性確認(validation)とモニタリングレポートに対する検証(verification)(モニタリングレポート毎に)が必要。
同一のDOEがvalidationとverificationを行うことが認められている。
なお、validationやverificationに係る費用については、日本政府による支援が受けられることがある。
  1. *1 京都議定書の第二約束期間(2013~2020年)の削減目標を京都議定書に登録していない先進国は、2013年以降のCDMには参加できないこととなっている。日本は、第二約束期間の削減目標を登録していないため、2013年以降新規にCDMに参画することはできない。
  2. *2 国内取引は可能。つまり、日本のJCM登録簿上に開設した法人保有口座間でのJCMクレジットの移転ができる。
    なお、取得したJCMクレジットの用途については、日本国JCM実施要領第5条第2項で、
    ①無効化することによる温室効果ガス算定排出両党の報告等に関する命令第1条第4号に基づく調整後温室効果ガス排出量の調整
    ②カーボン・オフセット等への活用
    と規定されている。
    特に、①については、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)及び「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)に基づいて報告が義務付けられる温室効果ガス排出量について、JCMクレジットを無効化(JCM登録簿の無効化口座に移転)することにより、その分を差し引いて報告することが認められる。
  3. *3 CDM理事会メンバー(理事)は、地域配分に基づいてCMPで選出・決定される。理事は個人の資格で職務に当たる。
  4. *4 JCメンバー(委員)は、両国政府の代表者である。
  5. *5 CDMでの追加性とは、通常の商業ベースでも実施されるプロジェクトでは、「追加性」がないとされる。例えば、相応の利潤が認められる場合には、追加性がないと判断されうる。CDMを活用するからこそ、すなわちCERの売却益があるから、利益性が認められる、ということを証明する必要があり、その証明を有効化審査(validation)で指定運営機関(DOE)が認め、登録申請段階でCDM理事会に認められる必要がある。
  6. *6 リーケージ排出量とは、当該プロジェクトの実施によって、プロジェクトの範囲外で間接的に排出増が起こる場合の排出量のこと。よって、プロジェクトの管轄外での状況もモニタリングする必要がある場合がある。
    なお、JCMではリーケージ排出量ではなく、リーケージがあると認められる場合にはプロジェクト排出量に含めることを想定し、JCM方法論のモニタリング用シートに当該項目が含められることとされている。
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