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クレジットの売買、利用の仕組み

 炭素クレジットは、証券の取引に類した方法で取引(売買)することができます。具体的には、各クレジット制度で定められるアカウントシステム上で、炭素クレジットのシリアルナンバーを指定して口座から口座へ移転されることとなります。したがって、炭素クレジットの売買のためには、原則として売り手側・買い手側ともにクレジット用口座を開設することが必要となります。しかし、例えば、個人が自らの排出分(自動車を利用したことによる排出量など)を相殺するために炭素クレジットを購入しようとする場合など、小口での利用に当たっては、代理業者によって管理される分を購入する方法もあります。この場合は、代理業者が炭素クレジットを保有(事前購入等により)しているものを購入したこととするという方法が取られます。購入した証として、代理業者から購入した炭素クレジットのシリアルナンバーを付した証明書等が発行されるなど、多くの場合、炭素クレジット購入に関する証拠が購入者に提供されます。

 また、炭素クレジットを購入しただけであれば、口座間の移転にとどまりますが、取得したクレジットを「利用」するということは、その炭素クレジットにより排出した分を相殺するということとなります。(地球全体の温室効果ガスを削減するために、相殺せずに取り消すという方法も可能です。)
 CDMのような国連の下での国際的なメカニズムでは、温室効果ガス(GHG)は地球上のどこで削減しても1tCO2の効果は同じであるとして、世界規模でCDMクレジット(CER)は売買されています。このような規模の大きなメカニズムでは、CERの効果は世界中どこでも1tCO2=1tCO2として等価交換されることが保証され、よって炭素市場が形成されるに至りました。  クレジットの売買では、クレジットの信用度に応じて価格が決められることとなります。市場原理が作用しているためです。

 例えば、国連のCDM理事会から発行済みのCER(Secondary CERと呼ばれます)は確実に1tCO2分の排出権としての価値を有していますので、価格は高く設定されます。これに、例えば後発開発途上国の最貧層の生活向上に寄与するCDMプロジェクト(例えば、太陽熱を利用した調理器具を各家庭に導入する事業。それまでは練炭等を調理燃料に利用していたものを太陽熱で代替することで練炭利用から発生するCO2を削減する)から生み出されたCERであればプレミアがつくこともあります。逆に、国連に登録されたCDMプロジェクトであっても、CERが発行される前に先物取引されるような場合(この場合のCERはPrimary CERと呼ばれます)、CERが確実にかつ必要な量が発行されるかに不確実性が伴うため、Secondary CERよりも安く設定されます。それ以外の方法としては、CDMプロジェクトの実施者やクレジット保有者との相対取引によって取得することなども可能です。
 CDMを例に説明しましたが、基本的に炭素クレジットの売買は市場を通じて調達するか、個別協議を通じて調達することとなります。

 ここで留意すべき点としては、クレジット制度が異なる場合に、1tCO2の価値(排出権としての効果)が同じか、という点です。京都議定書で規定されたメカニズムやクレジットは、基本的に同じ価値を有しています。すなわち、AAUもCERもERUも1tCO2は同じ1tCO2です。これはUNFCCC/京都議定書の統一的な仕組みの下で決められたものだからです(ですので、京都議定書の下で用いられるクレジット(排出権)は「京都ユニット」と呼ばれることもありますし、CDMやJIなどは「京都メカニズム」と呼ばれます)。そして、UNFCCC加盟国においても基本的には同じ価値を持つことになります。しかし、例えばJ-クレジット制度で生成されたクレジットの価値は、CERの価値と同じか、ということは言えません。したがって、原則的には制度毎にクレジットを管理する登録簿を整理し、その登録簿の下で管理される口座間での取引に限定されることとなります。そういう運用しか認められないとなると、ある国の国内制度はその国でしか利用できないということとなり、炭素クレジットを用いてGHG削減を効率的に進めることの趣旨と反することもありえます。そこで、この制度の枠組みを超えた制度間連携を行っている複数の個別制度もあります。なお、京都ユニットは基本的にどの制度においても1tCO2の価値は1tCO2として認められています。京都ユニットが炭素クレジットの「基幹通貨」といえるでしょう。

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 クレジットの利用については、クレジットが売買可能であれば、転売目的で取得することも可能です。その場合、クレジットの無効化は行われない形での中間利用ということになります。

 炭素クレジットの利用という場合は、通常クレジットの無効化のことを指します。クレジットの無効化とは、そのクレジットを以降使えないようにするということで、クレジットを管理する登録簿内に設定される無効化のための口座に移転することで、無効化されることになります。この場合、例えば、ある企業がその事業活動において昨年排出したGHGを、炭素クレジットで相殺する場合、炭素クレジットを無効化口座に移転し、その分を自社の排出したGHGを削減する効果としてカウントする、といった利用方法となります。なお、無効化せずに保有しているだけでは、自社排出GHGの削減に使ったとは言えません。将来的に再利用することが可能だからです。無効化したクレジットはその後無効化口座から出すことはできないため、以降再利用することができないものとなり、ゆえに「利用した」ということを担保できるからです。

 なお、クレジットの無効化には、2種類の方法があります。京都議定書の下で整備される各国の登録簿には、「償却口座」と「取消口座」が存在します。「償却」とは、前述のGHG排出効果を相殺する等炭素クレジットを用いてGHGの排出を肩代わりさせる利用方法に対する無効化の方法です。「取消」とは、炭素クレジットを何かの肩代わりに利用せずに、ただその炭素クレジットを無効化する方法です。

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