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クレジット制度とは

 炭素クレジットを生成するには、温室効果ガス(GHG)を削減し、あるいは森林活動等によりGHG(主にCO2)を吸収し、大気中に放出されるべきであったGHGが放出されていない状況を作り出すことによって、その放出されるべきであったが放出されなかったGHGを定量的に算定する必要があります。そのようなGHGの削減・吸収量の定量的評価に基づいて、それに応じた(あるいはそれよりも保守的な)分が、炭素クレジットとして発行され、証券のような無体の取り引き可能な権利として利用されます。
 そのような炭素クレジットを生成する制度には、以下のようなものがあります。

1.クリーン開発メカニズム Clean Development Mechanism:CDM

国連気候変動枠組み条約(United Nations Framework Convention on Climate Change:UNFCCC)の京都議定書で定められた開発途上国と先進国との国際協力によって実施される制度。
京都議定書第12条にて規定されています。

【京都議定書 第12条】(和訳は、環境庁地球温暖化対策研究会暫定訳による*1

  1. 1. クリーン開発メカニズムについて、ここに定める。
  2. 2. クリーン開発メカニズムの目的は、非附属書Iの締約国*2が持続可能な開発を達成し、及び条約の究極の目的*3に貢献することを支援し、並びに附属書Iの締約国が第3条の規定に基づく数量的な排出抑制及び削減の約束の遵守を達成することを支援することとする。
  3. 3. クリーン開発メカニズムの下で、
  4. (a) 非附属書Iの締約国は、認証された排出削減量をもたらす事業活動から利益を得る。
  5. (b) 附属書Iの締約国は、この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議の決定に従い、第3条*4の規定に基づく数量的な排出抑制及び削減の約束の一部の履行に寄与するため、事業活動から生ずる認証排出削減量を利用することができる。
  6. 4. クリーン開発メカニズムは、この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議の権威と指導に従い、及びクリーン開発メカニズムの執行委員会によって監督される。
  7. 5. 各事業活動から生ずる排出削減量は、この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議が指定する運営組織が、次の原則に基づいて認証する。
  8. (a) 関係締約国によって承認された自主的な参加
  9. (b) 気候変動の緩和に関連する実質的で、測定可能な、長期的な利益
  10. (c) 認証された事業活動がない場合に生じる削減に対し、追加的な排出削減
  11. 6. クリーン開発メカニズムは、必要に応じ、認証事業活動の資金の準備を支援する。
  12. 7. この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議は、第1回会合において、事業活動に対する独立した監査及び検証を通じて透明性、効率性及び責任を確保するために、方法及び手続を策定しなければならない。
  13. 8. この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議は、認証事業活動の利益の一部が、運営費用を賄うとともに、気候変動の悪影響に対して、特に脆弱な開発途上締約国が適応の費用を支払うことへの支援に用いられることを確保しなければならない。
  14. 9. 3(a)の規定による活動及び認証排出削減量の獲得を含むクリーン開発メカニズムへの参加は、民間又は公的主体を含むことができ、クリーン開発メカニズムの執行委員会が与えるすべての指導に従わなければならない。
  15. 10. 2000年から第1期の約束期間が始まるまでの期間に得られた認証排出削減量は、第1期の約束期間における遵守の達成を支援するために用いることができる。
  1. *1 参照元 https://www.env.go.jp/earth/cop3/kaigi/kyoto01.html
  2. *2 UNFCCCの附属書Iに含まれていない締約国のこと。開発途上国とほぼ同義ですが、1992年時点で定められたため、その後OECDに加盟した韓国やメキシコも、附属書I国に含まれていません。また、現在GDPでは世界第2位担っている中国も附属書Iには含まれて居ません。
  3. *3 UNFCCC第2条に規定されています。「第2条(目的):この条約及び締約国会議が採択する法的文書には、この条約の関連規定に従い、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきである。」
  4. *4 京都議定書第3条では、京都議定書における先進締約国のGHG削減目標の約束(Commitments)を規定しています。2012年の改定による条文追加により、第二約束期間についても規定されるようになっています。

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 この京都議定書第12条に言う「認証排出削減量(あるいは認証された排出削減量)」とは、原文ではCertified Emission Reductionとされており、その頭文字をとってCERと称されます。CERはCDMを利用して排出削減に寄与するプロジェクトを実施した結果として国連(CDM理事会)から発行された炭素クレジットです。CERの発行のためには、事前に承認されたCDM方法論に基づいて、GHG排出削減の計算の起点となる「ベースライン排出量」を特定し、CDM方法論に即したモニタリングを行い、モニタリング結果を第三者による検証を受けた上で、国連(CDM理事会*5)による認証を得る必要があります。特殊なCERとしては、新規植林・再植林(Afforesetatin/Reforestation;A/R)のCDMぷロジェクトの結果として発行されるものがあります。新規植林・再植林では、CO2を吸収する働きのある樹木を植えることとなりますが、植えられた樹木はいずれは伐採されるか枯れたり朽ち果てたりしてしまいます。これは樹木が吸収したCO2を未来永劫当該樹木の中に固定される訳ではない、一時的に樹木に固定されるものである、との考え方に基づくものです。非永続的な炭素クレジットとなり、短期的CER(tCER)又は長期的CER(lCER)として、定められた期間*6の後に失効します。tCER、lCERの失効までに、他の炭素クレジット(CERでもよい)によって、失効する分について補填することが求められます。
 また、CDMは、GHG排出削減の義務を持たない開発途上国で実施されるため、当該CDMプロジェクトが実施されなかった場合に排出されていたGHGの量を「ベースライン排出量」として特定するとともに、当該CDMプロジェクトはCDMがなければ実施されなかったであろうとういことを証明する必要があります。これは京都議定書第12条5(c)の規定に基づくもので、プロジェクト実施者がそのプロジェクトの「追加性」を証明し、プロジェクト登録前に審査機関の審査と、CDM理事会による登録審査で認められる必要があります。
 CDMでは、排出削減義務を持たない開発途上国で排出していたであろうGHGを排出しないこととしたという方法で、GHG削減量を定量的に評価するため、厳格な条件が設けられています。このため、条件を満たしているかどうかについての審査も厳格に行われ、第三者審査機関による審査を通過しても、CDM理事会による審査が行われるなど、手続きに係る労力とコストがかかる仕組みとなりました。しかしながら、国連の管轄による仕組みであるため、CERに対する信頼度も高く、世界のいずれの締約国でも同じ単位(tCO2)で取り引きができ、また排出枠の追加に利用できます。

 なお、2013~2020年の京都議定書第二約束期間では、日本が同議定書上の改定附属書BにおいてGHG削減目標を有していないことから、日本では*7CDMが利用できなくなっています。

  1. *5 環境庁地球温暖化対策研究会暫定訳では、「クリーン開発メカニズムの執行委員会」とされていますが、原文では「an executive board of the clean development mechanism」であり、現行は「CDM理事会」と呼ばれるようになっています。
  2. *6 tCERは次期約束期間終了時に失効、lCERは当該プロジェクトのクレジット期間終了時に失効することとなります。なお、A/R以外の通常CDMプロジェクトのクレジット期間は、10年間又は7年間(2回更新可)のいずれかを選択するのに対し、A/R CDMプロジェクトのクレジット期間は、30年間又は20年間(2回更新可)のいずれかを選択することで決定されます。
  3. *7 正確には、日本国の登録簿システムにCER(tCER、lCER含む)を他国から納入したり、他国にCERを売却することができない、ということとなります。日本国の登録簿システムの下に開設している民間事業者等の口座についてもその制約を受けるため、CERを他国から購入して日本国の登録簿システム下の自社口座に組み入れたり、自社が保有しているCERを他国企業等に販売して日本国の登録簿システム下の自社口座から移転することができなくなっています。

2.共同実施 Joint Implementation:JI

UNFCCCの京都議定書で定められた、先進国同士の間で実施される制度。京都議定書第6条にて規定されています。

【京都議定書 第6条】(※注釈はO-JCMネットワークによる)

  1. 1. 第3条*8の規定に基づく約束*9を履行するため、附属書Iの締約国は、他の附属書Iの締約国から、あらゆる経済部門における温室効果ガスの発生源による人為的な排出の削減又は吸収源による人為的な吸収の強化を目的とする事業から生じる排出削減単位を、移転し又は獲得することができる。ただし、次の要件を満たすことを条件とする。
  2. (a) かかる事業について、関係締約国の承認を得ていること。
  3. (b) かかる事業が、当該事業が行われない場合に対して、追加的な、発生源による排出の削減又は吸収源による吸収の強化をもたらすこと。
  4. (c) 第5条及び第7条の規定に基づく義務を遵守していない場合には、排出削減単位を獲得しないこと。
  5. (d) 排出削減単位の獲得が、第3条の規定に基づく約束を履行するための国内の措置に対して補完的なものであること。
  6. 2. この議定書の締約国の会合として機能する締約国会議は、第1回会合において又はその後できる限り速やかに、検証及び報告のためのものを含め、この条の規定を実施するために必要な指針を策定することができる。
  7. 3. 附属書Iの締約国は、その責任により、この条の規定に基づく排出削減量の発生、移転又は獲得につながる活動への法的主体の参加を認めることができる。
  8. 4. 第8条の関連する規定に従って、附属書Iの締約国によるこの条に規定する条件の実施についての疑義が提起された場合であっても、当該疑義が提起された後も、引き続き、排出削減単位の移転及び獲得を行うことができる。ただし、遵守の問題が解決するまでは、いかなる締約国も、第3条の規定に基づく約束の履行のためにこの排出削減単位を用いてはならないことを条件とする。
  1. *8 京都議定書第3条では、京都議定書における先進締約国のGHG削減目標の約束(Commitments)を規定しています。2012年の改定による条文追加により、第二約束期間についても規定されるようになっています。
  2. *9 原文では、commitmentsとされています。いわゆる各国のGHG削減目標のことです。

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 この京都議定書第6条にいう「排出削減単位」とは、原文ではEmission Reduction Unitとされており、その頭文字をとってERUと称されます。JIが削減目標を有する先進国間でプロジェクトを共同で実施し、その結果として得られるERUを移転する制度です。先進国は京都議定書附属書Bにおいて削減目標が設定されており、それにしたがって国別割当量(AAU)を有しているので、ERUはAAUを転換して、JI用のクレジットとして発行されます。
CDMでは、プロジェクトが実施される国は途上国で、途上国はAAUを有していないため、当該プロジェクトが実施されなかった場合をベースラインとして設定し、そのベースラインの状況とプロジェクトを実施した際の状況を比較して、排出削減量を算定し、それに応じて国連(CDM理事会)からクレジット(CER)が発行されます。JIでは、CDMと異なり、プロジェクトが実施される国も先進国で、その先進国はAAUを保有しています。AAUを転換してJI用のクレジットERUが発行されるため、プロジェクト実施国のAAUが減少し、ERUが移転される(受け取る)国ではERU分がAAUに追加されることとなります。すなわち、JIプロジェクトの実施によっても、先進国全体での排出量は増加しないこととなります。その意味では、プロジェクトを介した「排出量取引制度」という側面を有しています。
類似したシステムとしては、「グリーン投資スキーム(Green Investment Scheme;GIS)」というものがありますが、これは国際排出量取引に条件を付したもので、JIが排出削減プロジェクトを実施してその削減分をERUとしてクレジット化するのに対し、GISではプロジェクトを介してはいるものの、クレジットはAAUのままで先進国間で取り引きされるものです。

 なお、2013~2020年の京都議定書第二約束期間では、日本が同議定書上の改定附属書BにおいてGHG削減目標を有していない、すなわちAAUを保有していないため、日本はJIに参加できなくなっています。

3.二国間クレジット制度 JJoint Crediting Mechanism:JCM

 日本政府は、CDMの課題を克服する新たな国際的なクレジット制度の創設を企図し、関係各国との協議を経て、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism;JCM)を構築しました。JCMは、その名のとおり、日本とJCM実施について署名したパートナー国との間で実施される制度です。その基本概念は、「二国間クレジット制度(JCM)とは」で紹介しています。

4.J-クレジット制度

 J-クレジット制度は、日本国内での省エネ機器の導入や森林経営などの取組により、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する、国によって運営される、日本国内のクレジット制度です。この制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できます。
  J-クレジット制度でも、CDMやJCMと同様に、まずどのような温室効果ガス排出削減・吸収事業(省エネ設備の導入、森林管理等)を実施するかを記載した「プロジェクト計画書」を作成します。そのプロジェクト計画がプロジェクトの実態を反映したものか、制度の規程に沿っているかを専門機関(本制度に登録された審査機関)により事前確認(審査)を受けた後、登録申請を行うこととなります。登録申請には、既定の申請資料を既定の提出先・方法にて提出し、その申請資料は有識者委員会に諮られた後、国が正式にプロジェクトを登録することとなります。
  プロジェクトが登録され、プロジェクトを実施したら、登録したプロジェクト計画に基づき、排出削減量(又は吸収量)を算定するための計測を行い、計測結果に基づいて排出削減量(又は吸収量)を算定し、「モニタリング報告書」を作成します。モニタリング報告書に対しては、モニタリング方法等が制度の規程やプロジェクト計画に沿って行われているかについて、審査機関による事前確認(検証)を受ける必要があります。検証を通過した後、モニタリング報告書と検証報告書とともにクレジット認証申請書を提出し、有識者委員会に諮られ認証を受けた後、国からクレジットが発行されることとなります。
  J-クレジットは、国内での削減・吸収によって生み出されるため、日本国内で利用されます。また、J-クレジット保有者は、日本国内の他者にJ-クレジットを販売することも可能です。J-クレジットの最終的な利用用途としては、低炭素社会実行計画の目標達成のための活用、省エネ法での活用、温対法での活用、ASSET事業での活用のほか、カーボン・オフセットなどへの活用が可能となっています。いずれの活用においてもJ-クレジットの無効化手続を実施する必要があります。なお、J-クレジットを取得・活用するためには、J-クレジット登録簿システムにJ-クレジット保有口座を開設する必要があります。

 

 J-クレジット制度では、プロジェクト計画書の作成とその審査、登録申請、モニタリング報告書の作成とその審査、クレジット認証申請などについて、国による支援を受けることが可能です。詳細は、下記の「J-クレジット制度」のウェブサイトをご参照ください。

 

 J-クレジット制度は基本的には国により運営される制度ですが、地方公共団体がJ-クレジット制度の制度文書に沿って温室効果ガス排出削減・吸収量をクレジットとして認証する「地域版J-クレジット制度」を運営することも可能となっています。なお、地域版J-クレジット制度において認証された地域版J-クレジットは、国が認証したJ-クレジットと同様にJ-クレジット登録簿で管理されます。

 

【参考ページ(リンク)】
J-クレジット制度:https://japancredit.go.jp

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