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ヨーロッパアルプス紀行「⑨マッターホルン」

2019.07.28
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 マッターホルン(4,478m)が頂上まで見えたのは、ツェルマット(1,620m)に到着した夕刻だけであった。氷河が溶けた水を集めてとうとうと流れる少し青みがかった乳白色のマッター・フィスパ川の側道には、先刻まで降っていた雨の水たまりが所々にできていた。川に架かる橋はマッターホルンを写そうと多くの観光客で賑わっている。マッター谷の奥のツェルマットの街が暗くなり始めたころ、マッターホルンの尖った姿が少し夕日に輝き、水たまりにその姿を逆さに写していた。
 
 翌朝、ゴルナーグラート展望台(3,131m)へ向かう。ゴルナーグラート登山鉄道のツェルマット駅からゴルナーグラート駅(3,089m)まで、アプト式ラックレールの登山鉄道に乗り33分ほどである。2500メートルを超えるあたりから雲の中を上って行き、ゴルナーグラート駅に着くと、モンテローザ(4,634m)、リスカム(4,527m)、マッターホルン、ゴルナー氷河など壮大な景色が望めるはずが、どこに何があるかもわからない。諦めて、早々に下りの電車に乗ると、少し雲が切れてきたので、途中のリッフェルベルク駅(2,582m)で降りて、晴れ間を待つが、中々雲が切れそうも無い。次のリッフェルアルプ駅(2,222m)まで歩いて下ることにした。ガイドブックでは初級者向けのハイキングコースで約2.6キロメートル、途中でマッターホルンを眺められ、花畑もあると記載されている。九十九折の道は中々の急斜面で、ツェルマットの村を下方に見ながら下るが、3000メートル以上の山々は雲の中である。1時間30分でリッフェルアルプ駅に着き、ツェルマットのホテルへ戻った。

 翌日は天候が回復するとのことで、旅行会社が交渉し、通常営業の前に運行して貰った全線地下のケーブルカーに乗り、スネガ・パラダイス(2,288m)まで上る。5分ほどで到着である。駅の展望台のすぐ下の湖ライゼー(2,232m)に降りる。マッターホルンは北東稜を正面に左右に裾を広げる姿も、水面に逆さに映る姿も見せてはくれなかった。

 ヨーロッパアルプスの名峰は、いくつもあるが、秀峰と言えばマッターホルンであろう。その天に向かって尖った端整な容姿は独立峰であるゆえの孤高、気高さをイメージさせる。ツェルマットへ来る観光客はマッターホルンの端麗な姿を見るのが目的なので、その姿が美しく見える・見えないは、観光産業にとって死活問題である。悪天候で見えないのは仕方がないが、空気が清澄であることは必須である。排気ガスを出す車の乗り入れを禁止しているのも、温度成層が形成されやすい谷間の村では当然である。もう一度訪れた時は晴天で端麗な姿を見せて欲しいものである。

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