麦秋

2021.05.25
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 麦秋(ばくしゅう)」は初夏の季語である。麦は種を晩秋から初冬にかけて蒔き、冬に芽を出し、春暖かくなると育ち、麦畑は緑色になる。初夏になると麦の穂がたわわに稔り、麦畑は黄金色に染まり、麦にとっての「秋」の季節を迎える。5月下旬から6月初旬の梅雨入りがせまるつかの間の乾燥する季節に収穫なのだが、今年は収穫する前に梅雨入りしてしまった。写真は奈良県桜井市の大西地区にある三輪山を望む麦畑である。

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 奈良県の小麦生産量は少量であるが、奈良盆地の中南部、田原本町や桜井市で多く栽培されており、歴史は奈良時代以前まで遡る。写真で見る麦畑も、以前はほとんどが稲作の田んぼであったが、減反、転作の流れで、一面が小麦畑になり、この時季には麦秋の風景が見られるようになった。もともと奈良県は小麦栽培が盛んで、三輪素麺や半夏生餅(はげっしょうもち)など、小麦食品が昔から食べられている。江戸時代には、大和盆地で栽培された小麦を集め、三輪山周辺の河川で水車製粉が盛んに行われ、桜井市には今でも製粉会社が2社ある。小麦粉の一部は学校給食用パンや三輪素麺に使用されているそうである。

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 小麦は実の胚乳に含まれるたんぱく質(グルテン)により、小麦粉に水を加えてこねると、弾力性と粘着性をもったグルテンがつくられ、腰のある麺やふっくらとしたパンなど、米やトウモロコシではできない加工食品や調理に利用されている。小麦粉はタンパク質の含有量の多少により、強力粉、中力粉、薄力粉と区分され、パンやギョウザの皮は強力粉、うどんは中力粉、ケーキは薄力粉と使い分けされている。

 刑務所に入ることを「くさい飯を食う」と言われたが、「くさい飯」は麦飯のこと。1950年国会で大蔵大臣池田隼人が「貧乏人は麦を食え」と発言し問題になったが、麦飯として食べられるのは大麦である。大麦はグルテンをほとんど含まず、発芽させ麦芽としてビールや味噌、醤油、麦茶などの原料となる。大麦もこの時季には「麦秋」をむかえる。

 実りの「麦秋」に感謝してビール(原料は二条大麦)で乾杯とビアガーデンにでも行きたいところだが、コロナ禍の状況では自粛である。昼食はパン、夏には三輪素麺をツルツルと、たまには、健康食品である麦飯も食べ、巣ごもり生活を乗り切ることにしよう。

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