ヒヨドリ

2020.04.11
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 ヤドリギの宿主であるソメイヨシノが満開となると、ヤドリギは花に隠れて見えづらくなった。ソメイヨシノの花芯が赤くなるにつれ、風に乗って少し甘い香りがしてくる。蜜を求めて、朝から「ピッピッピピ」、「ヒーヨ!ヒーヨ!」と甲高く鳴き「ヒヨドリ(鵯)」が何羽もやってくる。この時季、メジロやスズメもやってくるが、ヒヨドリは全長28cmほど、翼開長40cmほどもあり、体格の良さからソメイヨシノの枝から枝へと我が物顔である。我が世の春と、花の蜜を吸うヒヨドリを見るのは、まったく長閑で春うららである。

 ヒヨドリは東アジアに分布するが、生息数は日本が多く、市中でもごく普通に見られる。東京あたりでも、留鳥として一年中棲む個体もあるが、大好物の花の蜜や果実を求めて、春には北上、秋には北海道から本州へ渡る漂鳥も数多くいる。当地では桜の花が散り、花実もなくなると、ヒヨドリの姿は見られなくなる。ヒヨドリと言えば、「一の谷の戦い」で、源義経が平家の陣の背後から奇襲した「鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし」の話がある。「鵯越」は、春と秋にヒヨドリの渡りの場所であることから付いた名とのことである。

 今、新型コロナウイルスが猛威を振るい、「鵯越の逆落とし」の奇襲で一気に大混乱となった平家のごとく、世界中が大混乱である。国難とも言うべき東日本大震災があった時に、被災地の様子をテレビのニュースで見ていて、印象深い言葉があった。辛苦の生活が長期間続いて、電気、水道などのインフラがようやく復旧し、スイッチをオンにして灯りが点いた時、水栓をひねり蛇口から水が出た時、人々が発した言葉は皆「最高だぁ」であった。何事も無い平穏の生活に戻れることの幸せ、安堵、感謝の言葉である。

 行きたい所に行けない、逢いたい人に逢えないのは、まことに辛いものである。大震災は一時に襲って来たが、コロナ禍は真綿で首を締めるように人々を責めてくる。長期の戦いとなるが、世界の英知の総結集と、感染拡大を防ぐ個々人の責任ある行動とを辛抱強く続けなければならない。収束する時までは、あちこち飛び回ったり、群れたり、さえずり合ったりしてはならない。困難に打ち克ち、「最高だぁ」と言える時は必ずやってくるのである。

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